先日、行政法全般について深く研究されている方とご一緒させていただきました。お話を伺っていて、僕はとても恥ずかしくなりました。建設業許可や経審・入札についての実務はそれなりに経験してきましたが、建設業法について語れるレベルが低かったからです。
そこで、自分自身の学習のため、またこれから建設業許可や建設業法に携わっていく行政書士さんの参考になればと思い、「 行政書士のための逐条解説!建設業法! 」を書き溜めることとしました。解釈について議論が生じる部分もあると思いますし、間違ってしまうこともあるかもしれませんが、建設業許可や経営事項審査と建設業法について考えるきっかけになれば幸いです。
建設業法の章立てを確認しておこう!
早速、第1条に入りたいところですが、まずは建設業法の章立てについて触れておきたいと思います。建設業法の章立ては次のとおりです。
第一章 総則
第二章 建設業の許可
第三章 建設工事の請負契約
第三章の二 建設工事の請負契約に関する紛争の処理
第四章 施工技術の確保
第四章の二 建設業者の経営に関する事項の審査等
第四章の三 建設業者団体
第五章 監督
第六章 中央建設業審議会等
第七章 雑則
第八章 罰則
以下、個別に見ていきます。
第一章 総則
どの法律も大体同じですが、第1条と第2条でその法律を読み進める上で大事なことが定められています。この辺のことは、行政書士試験でたくさん勉強したのではないでしょうか。
建設業法においては、第1条は建設業法の目的を、第2条は建設業法に出てくる言葉の定義をそれぞれ規定しています。詳しくは条文ごとの解説のときに書きますが、言葉や文言を扱う行政書士として、第一章はきちんと理解しておきたいところです。
第二章 建設業許可
皆さん大好きな建設業許可について定めた章です。通則、一般建設業の許可、特定建設業の許可、承継の4つの節に分かれていて、そこからさらに条文が細かく設けられています。第4節「承継」は令和2年10月改正により新設された新しい節です。
どんな場合に建設業許可が必要なのか、どのような許可があるのか、どのような要件があって、許可を取得するためにはどんな書類が必要なのか等、建設業許可業務を扱う上では行政書士としてまず読み込むべき章と言えます。
特に第7条ではいわゆる経管・専技について定められており、ここから建設業法施行規則や告示や通達などへ行き来する機会が多くなると思います。この往来が楽しくなってきたら、建設業専門の行政書士の沼にようこそ!です(笑)
第三章 建設工事の請負契約
第二章の建設業許可の後に書いてあるので建設業許可業者について定めたものかと思いきや、施主か請負業者か、許可業者か否かといった区別とは関係なく、広く工事請負契約について定めています。
この節を読む上でとても大事なのが、“主語は何か”、“この条文の目的は何か”を意識することです。その意味でもやはり第一章の理解は不可欠です。
建設業許可業務に携わっていると、お客様からたくさんの質問をいただきます。その中でも多いのが第19条の契約書関係と、第22条の一括下請負の禁止についてと、支払い関係についてです。裏を返すと、この第三節に詳しいかどうかでお客様からの信頼は大きく変わってくると言えるのではないかと思います。
第三章の二 建設工事の請負契約に関する紛争の処理
行政書士としてこの章のお世話になることはまずないと思いますが、建設工事紛争審査会というものがあることは知っておいた方がよいでしょう。
建設工事紛争審査会とは、あっせん・調停・仲裁により紛争の早期解決を図るために設けられた工事請負契約に関する紛争の処理を行うADR(裁判外紛争処理)機関です。各都道府県の行政書士会にもADRセンターがあると思いますので、それをイメージしてもらうと良いかと思います。
建設工事紛争審査会は、元請と下請といった建設業者間での争いはもちろんのこと、施主さんと建設業者の争いについても利用することができます。と言っても、僕も15年この仕事していて、お客様に勧めたことは一度もありません…。
第四章 施工技術の確保
ここ数年の建設業法の改正でめまぐるしく変わっているのが、主任技術者や監理技術者をはじめとした技術者制度です。
令和2年10月改正では経管や事業承継のインパクトが大きかったですが、その一方で技術者制度はちょこちょこと緩和されたり変更されたりしていて地味な変更が多いです(笑)しかし、技術者制度は建設業者さんの日々の活動に直結することが多いので、建設業許可業務を扱う行政書士としては常にアンテナを張っておきたいところです。
行政書士として重要なのは主任技術者と監理技術者について規定している第26条かと思いますが、第四章では監理技術者講習、施工管理技士の技術検定、監理技術者資格者証とその講習機関や試験機関について定められています。
第四章の二 建設業者の経営に関する事項の審査等
本章では、第二章の建設業許可と並んで皆さん大好きな経営事項審査いわゆる経審について定められています。建設業許可業務よりも時に煩雑で、公共工事に参入する際の格付けの客観的評価としてものすごく重要な経審ですが、実は条文の数は14か条(うち5か条は登録経営状況分析機関についての規定)しかありません。なぜでしょうか?
それは、経審についての細かいことはほとんどが告示で決まっているからです。なので、経審・入札支援業務を行う上では正直言って本章を何度も読み返すということはないかと思います。しかし、経審の構成について理解する上では大事な章なので、迷ったときはスタート地点に戻る感覚で本章に戻ってみるとよいでしょう。
第四章の三 建設業者団体
ぶっちゃけてしまうと、実務上この章の条文を熱心に読むことは15年やってきて一度もありませんでしたし、なぜ「建設業者団体」だけ独立した章になっているのかもわかりませんでした。しかし、建設業法の目的に立ち返ってみると、建設業界の健全な発達には業界団体の協力が不可欠ということなのでしょう。
建設業許可の新規申請を扱ったことがある行政書士さんであれば、様式第二十号の二「所属建設業者団体」の記載方法で必ず一度は悩んだことがあるはず。その記載のヒントが本章にあります。
第五章 監督
本来は行政書士としてあまり見ることがないようにしたいの章なのですが、お客様からの質問に対してどういったリスクや処分がありうるかを把握するためには、第八章罰則とともにきちんと読み込んでおきたい章です。
本章では行政手続法に出てくるいわゆる“不利益処分”について定めた章で、建設業法では指示処分、営業停止処分、許可取消し処分が規定されています。この辺のことがお客様に向けてきちんとアナウンスできるようになると、“手引き書士”を卒業して手続きに留まらないサポートが可能になるものと思います。
第六章 中央建設業審議会等
本章は、経審の章でも出てくる「中央建設業審議会(以下、中建審)」について主に定めています。業法の改正でも経審の告示の改正でも国土交通省の諮問機関として様々な改正のシーンで登場するのが中建審です。
中建審に対して我々行政書士がなにか申請したり意見をしたりということはありませんが、建設業許可や経審・入札支援業務を行う上で、中建審の動き=建設業法令の改正や建設行政の今後の動向などを押さえておくことは必須と言えます。
第七章 雑則
“雑則”というくらいなので、その他もろもろな感じで内容があちこちに飛んでいる感があります。実務上は第40条(標識の掲示)と第40条の2(帳簿の備付け等)は触れる機会が比較的ありますが、それ以外は正直あまり目にする機会がないかなと思います。
しかし、第41条の2(建設資材製造業者等に対する勧告及び命令等)は令和2年改正で新たに設けられた条文で、行政が建設資材製造業者にも改善勧告や命令をできると規定されたのはとても大きな意味を持ちます。詳細は各条文の解説に譲りますが、建設業の生産性向上と働き方改革は急務です。
第八章 罰則
これはもう説明が不要かと思います。建設業法に定める諸々について違反したときの罰金や過料や懲役について定められています。第五章監督のところでも書きましたが、見なくて済むなら見ないままでいたいと願っています(笑)
さらには、罰則の条文って読みにくいんですよね。「第〇条第〇項に違反したとき」というように書いてあるので、その条文と行き来しながら見なければならないのがなんとも苦痛です。裏を返せば、この辺もきちんとまとめておいて、お客様にアナウンスできれば強いのではないかと思います!思うのですが、これがなかなか…。
次からいよいよ逐条解説!
いかがでしたでしょうか?こうやって章ごとに見てみる機会、俯瞰する機会って意外となかったのではないかと思います。今回は建設業法の章立てについて解説しましたが、実務をやっていく上では建設業法だけではなく建設業法施行令や建設業法施行規則といった省令等はもちろんのこと、告示や通達もとても重要になってくるのは言うまでもありません。
しかし、ここまで読んでくださった方は“手引き書士”や代書屋から一歩抜け出たい方だと思いますので、まずは根本に立ち返って一緒に建設業法を学んでいければ嬉しいです。