行政書士が経審・入札支援業務をやった方が良い理由

以前、『新人行政書士さんに建設業許可業務をオススメする理由』について書いたところ、多くの方にお読みいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

今回は一歩進んで、行政書士が経営事項審査と入札参加資格申請(以下、「経審・入札支援業務」)をやった方が良い理由についてお話していきます。この記事は、

  • まだ経審は自分には早いかなぁと思っている方
  • 経審は難しそうだし責任重そうだから…と敬遠していた方
  • コンサル的な仕事をしたいと思っている方

という方々に読んでいただきたくて書きました。本記事を読んで、少しでも経審・入札支援業務に興味を持っていただければ嬉しいです。

経審・入札支援業務をオススメする3つの理由

行政書士が経審・入札支援業務をやると自分にとってどんなメリットがあるのか、3つほどご紹介していきます。

1,お客様の「~したい」を実現して売上に貢献できる業務である

講師である小林は、経審・入札支援業務は単なる手続き業務ではなく、「公共工事を受注したい」「売上を増やしたい」という建設業者さんの「~したい」を実現する仕事だと思っています。

下の図をご覧ください。この図は『どうすれば、売れるのか?』(木暮太一著)の中で“類感マトリックス”として紹介されているもので、自社の商品やサービスを誰に向けて売るのかを検討するにあたり、その商品やサービスがお客様にどういった価値・ベネフィット・体験をもたらすのかを考えるのに有用です。

お客様の“不”の解消やお困りごとを起点に商品やサービスを考えるのは、ビジネスの基本です。これは今まさに抱えている悩みや不安を解消するということで、マイナスをゼロにするのがその商品やサービスの価値ということになります。

例えば、私も建設業許可の新規申請を業務として行っていますが、これは500万円以上の工事を請け負うためには建設業許可を取得していなければならないから取得する、元請業者から言われたから仕方なく取得するといったように、must(~しなければならない)という不都合を解消する業務です。その意味で、建設業許可業務はマイナスをゼロにするサービスと言えます。

建設業許可業務は、お客様の悩みや不安を解消する、困った人を助けるという意味ではとてもやりがいがありますが、出発地点が「面倒くさい」「~しなければならない」というマイナス地点からのスタートなことが多く、どうしてもネガティブな言葉が出てきてしまいがちです。

一方で経審・入札支援業務はというと、公共工事に参加したい、経審の点数を上げたい、売上を上げたいといったように、want(~したい)という希望や願望を実現する業務です。つまり、ゼロからイチを創り出す仕事と言うことができます。

お客様も公共工事を獲るため売上を上げるために意欲的なので、「こうした方が経審の点数が上がりますね」「ここの自治体はチャンスがあるかもしれませんよ」といったこちらのご提案を、ポジティブに捉えてしっかりと考えてくださいます。

我々行政書士は、直接札入れをして公共工事を獲ってきたり営業して仕事取ってきたりすることはできません。しかし、経審と入札の環境を整えることで、公共工事の受注に近づくこと・売上に貢献することができるのが、経審・入札支援業務の醍醐味だと思います。

2,やればやるほどコンサルティングができる

よく言われることですが、行政書士の業務は基本的にスポット業務なので、許認可の申請をして完了、納品して完了ということが多いです。そのため、税理士さんや社労士さんのような顧問型のビジネスやコンサルティングに憧れのある方は多いかと思います。そういう意味では、経審・入札支援業務は関わる行政書士よってお客様の結果が変わってくるという点で、まさにコンサルティング業務と言えます。

コンサルティングというと、きちんとしたコンサルスキルやコーチングスキル、財務や資金繰りに関する知識が必要だと思われるかもしれませんが、実はそれらがなくてもコンサルティングを行うことは十分に可能です。

しかも、経審は建設業許可の延長にあるものなので、許可、経審、入札、建設業法、建設業財務諸表などなど日々の業務で触れることすべてが、そのままコンサルノウハウになります。このときに大事なのが、かけ算です。

例えば許可×入札であれば、今の入札参加登録をしている業種だけでなく別の業種の公共工事を狙いたいのであれば許可業種の追加申請が必要で、そのためには○○という資格をもった人を専任技術者にして…というようなことをお客様と一緒に考えます。

例えば経審×建設業財務諸表であれば、弊社のセミナー(中級編・上級編)でもお話をしていますが、どうしたら点数が上がるのか下がるのか、決算前にできる対策はなにか、決算後でもできる対策はなにかをご提案していきます。

例えば入札×建設業法であれば、配置技術者の専任性とその例外についての知識、過去の裁判例のご紹介、昨今の専任性緩和措置の動向チェックなどの技術者関係はもちろんのこと、履行保証や支払いルールについてのご相談も出てきます。

経審を受けて公共工事を受注するようになると、お客様からの質問も高度化・広範囲化していきます。質問の時点でわからなければ、きちんと調べて確認して回答する。これが血となり骨となるわけです。イヤでも建設業法や建設業界に詳しくなりますし、それが自信につながると思います。

このように、建設業法や建設業界のことを積極的に学び、建設業務や経審・入札支援業務を深めていくだけで、知識を知恵やノウハウに変えてコンサルティングに活かしていくことができます。

3,お客様との関係性が濃くなる

冒頭でご紹介した『新人行政書士さんに建設業許可業務をオススメする理由』の記事でも書きましたが、建設業許可業務は毎年の決算変更届(事業年度終了報告届)をはじめとした許可取得後の変更届等の手続きが発生しやすく、お客様との接点に恵まれています。経審・入札支援業務はこの点がより顕著です。

経審は毎年決算のたびに受ける必要があります。お客様によってはその前から経審対策で関わることもありますし、経審が終わった後は振り返りと来年に向けた対策を検討することもあります。また、中央省庁や地方自治体など、多くの入札参加資格審査の定期受付が2年に1度(3年や毎年のところもあります)、例年10月から翌年2月頃までに集中しており、この時期のお客様のやり取りは自然と密度が濃くなります。

また、前述のとおり、経審・入札支援業務はお客様からの質問も高度化・広範囲化する傾向があります。建設業財務諸表を見ながら財務の話をしたり、今後の展開や営業戦略、採用・人材育成にまで話が及ぶこともあります。それだけ関与の度合いが自然と増えることになり、お客様との関係性も濃くなっていきます。

行政書士1人×月10万円×顧問10社を目指す!

いかがでしたでしょうか?行政書士が経審・入札支援業務をやった方が良い理由について、大きなものを3つ挙げてみました。これ以外にも、相続業務などの市民法務分野で注意が必要な業際問題が生じない、アウトソースしてもらうことでお客様の社内で属人的になるリスクを防ぐことができる、規模の大きい会社からのご依頼で100万円以上の大型案件の可能性もある、といった理由もあるかと思います。

これはまったくもって個人的な意見でずっと前からセミナーなどで話しているのですが、SNS上で許可の申請を何件やったとか、web集客で売上○○万円達成!とか、あいつに仕事を獲った獲られたという話を見聞きしていて、本当に不毛な戦いだなと思うんですよね。

そこで、どうしたらそういった無駄な競争がなくなるのかをずっと考えています。そこで自分なりの1つの答えが、行政書士1人月10万円の顧問料で10社のクライアントを持つことです。そうすると、月100万円×12月なので、最低でも年間1,200万円の売上が立つことになります。

そんなの無理でしょう?と思われる方もいるかもしれません。でも、無理だと思ったら実現しなくなってしまうので、そのためにはどうしたらよいか?どんなサービスがあったらお客様に喜んでもらえるか?を今も模索しています。

建設業許可業務だけでは月10万円の顧問料というのは正直難しいと思います(もし達成されている方はぜひともお話を聞かせてください!)し、そう考えると経審・入札支援業務は必修科目と言えるのではいかと思います。

私は、その中でも財務や経営状況分析(Y点)については、その必修科目の中でも優先順位が高いと思っています。入札参加資格申請のノウハウは地域性や発注者の独自性が強いために他で使えるとは限りませんし、財務やお金の話は経営者のお困りごとの常に上位にあるからです。

前述のとおり、ビジネスの基本は、お客様のお困りごとや悩みを解消することです。その中でもより優先度の高い、悩みの度合いが大きいものにフォーカスしていけると、お客様にもより喜んでいただけることになります。そこで、経審・入札支援業務を通じて、1つでも多くのお困りごとの解消、不の解消ができればいいなと願っています。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。本記事を読んで経審・入札支援業務に興味を持った方がいらっしゃいましたら、一緒に“建設業者の1番の相談相手は行政書士”というスタンダードを創っていきませんか?弊社の建設業財務諸表の極意セミナーがその一助になれば幸いです。

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